| 敬 語 | |
| 種類 | 尊敬語=その敬語動詞が表す動作の主体(動作の本人)を直接高める |
| 昔、惟喬の親王と申す親王おはしましけり。 | |
| (むかし、惟喬の親王と申し上げる親王がおいでになった。) | |
| 謙譲語=その敬語動詞が表す動作の主体を低めることによって、その動作の客体(動作の相手)を間接的に高める。 | |
| 花奉るめり。 | |
| (花をさしあげているようだ。) | |
| 丁寧語=誰かの動作を高める、低めるは関係なく、あくまで書き方や話し方をていねいにするだけ。 | |
| (「侍り・候ふ・さうらふ」のみ) | |
| 「おのがもとにめでたき琴侍り」 | |
| (私の所にみごとな琴があります。) | |
| 補助動詞と 本動詞 | 補助動詞=その動詞本来の、動作を表す意味を失って、助動詞のように上の語や文節に尊敬・謙譲・丁寧などの意味を添える働きをする動詞。 |
| はや神に祈り給へ。 | |
| (早く神にお祈りください。) | |
| 本動詞=その動詞本来の意味で用いる場合(補助動詞と区別するための、便宜上の呼び方) | |
| 火鼠の皮衣を給へ。 | |
| (火ねずみの皮衣をください。) | |
| 敬意の対象と方向 | ①誰からの敬意かは、その敬語が地の文(会話文でない普通の文)の中か、会話文の中かで判断する。 |
| 地の文 → 作者(筆者)から | |
| 会話文 → 話し手(会話の主)から | |
| ②誰に対する敬意か(尊敬の対象は誰か)は、その敬語の種類によって判断する。 | |
| 尊敬語 → 動作の主体へ | |
| 謙譲語 → 動作の受け手へ | |
| 丁寧語 → 読者あるいは聞き手へ | |
| ③誰から誰への敬意か(敬意の方向)は、①②の組み合わせで考える | |
| [二位の尼が安徳天皇に]「波の下にも都のさぶらふぞ」と慰めたてまつって、千尋の底へぞ入り給ふ。 | |
| (「波の下にも都がございますよ」とお慰め申し上げて、深い海の底へお入りになった。) | |
| a 会話文中の丁寧語だから、「二位の尼」から「安徳天皇」への敬意 | |
| b 地の文中の謙譲語だから、「作者」から「安徳天皇」への敬意 | |
| c 地の文中の尊敬語だから、「作者」から「二位の尼」への敬意 | |
| 「給ふ」の用法 | 給は・給ひ・給ふ(「思ひ・聞き・知り・見・覚え」意外についている=尊敬 |
| かぐや姫、いといたく泣き給ふ。 | |
| (かぐや姫は、とてもひどくお泣きになる。) | |
| 給ふる・給ふれ=謙譲 | |
| をさをさ憚りあるまじうなむ見給ふる。 | |
| (決して心配はあるまいと思っております。) | |
| 給へ → 四段か下二段かの判断がポイント | |
| 思ひ・聞き・知り・見・覚え+給へ=四段の巳然形・命令形=尊敬 | |
| 思ひ・聞き・知り・見・覚え+給へ=下二段の未然形・連用形=謙譲 | |
| 阿弥陀仏立ち給えり。 | |
| (阿弥陀仏がお立ちになっている。)=尊敬 | |
| 盗人つかまりつりけるをも知り給へず。 | |
| (盗人をいたしていたのも知りませんでした。)=謙譲 | |
| 「奉る」の用法 | 謙譲の本動詞(サシアゲル・謙譲スル) |
| 御文奉り給ふ。 | |
| (お手紙をさしあげなさる。) | |
| 謙譲の補助動詞 | |
| 天の羽衣うち着せたてまつりつ。 | |
| (天の羽衣をお着せ申し上げた。) | |
| 尊敬の本動詞(召シ上ガル、オ飲ミニナル、オ乗リニナル。 | |
| やつれたる狩の御衣を奉る。 | |
| (人目につかない狩衣をお召しになっている。) | |
| 「参る」の用法 | 謙譲の本動詞(参上スル・ウカガウ・参内スル・参詣スル・出仕スル) |
| 若宮参り給ひぬ。 | |
| (若宮が参内なさった。) | |
| 謙譲の本動詞(サシアゲル) | |
| 親王に、右馬の頭、大御酒参る。 | |
| (親王に、右馬の頭が、お酒をさしあげる。) | |
| 謙譲の本動詞(何カヲシテサシアゲル) | |
| 雪のいと高う降りたるに、例ならず御格子参りて | |
| (雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつになく御格子をお下ろしして) | |
| 尊敬の本動詞(召シ上ガル、何カヲナサル) | |
| ものもつゆばかり参らず。 | |
| (食事もほんの少しも召しあがらない。) | |
| 「侍り・候ふ」 の用法 | 謙譲の本動詞(オソバニヒカエル・オ仕エ申シ上ゲル・伺候スル) |
| 女御・更衣あまた候ひ給ひける中に | |
| (女御や更衣が大勢お仕え申し上げていらした中に) | |
| 丁寧の本動詞(アリマス・オリマス・ゴザイマス) | |
| 物語の多く候ふなる、ある限り見せ給へ。 | |
| (物語がたくさんありますとかいうのを、全部見せてください。) | |
| 丁寧の補助動詞(・・・デス、・・・マス、・・・デゴザイマス) | |
| 女の手にて書きて侍りける。 | |
| (女の字で書いてありましたとか。) | |
| 最高敬語 | 最高敬語=尊敬語が尊敬の助動詞と重なって「尊敬+尊敬」になる形。 |
| 非常に高い敬意を表す表現で、地の文では原則的に皇族のような特別な身分の人にしか用いないが、会話文ではゆるやかに用いる | |
| ①尊敬の「す・さす・しむ」+尊敬語、せ・させ・しめ+給ふ(おはします) | |
| ②尊敬語+尊敬の「る・らる」、思さ+る、仰せ・御覧ぜ+らる | |
| ①主上、今年八歳にならせ給ふ。 | |
| (帝は、今年八歳におなりになる。) | |
| ②「かくなむ」と仰せらる。 | |
| (「こうこうだ」と仰せになる。) | |
| 絶対敬語 | 絶対敬語=謙譲語の中でも、いわば「謙譲+謙譲」にあたるような、尊敬語とは逆方向の最高敬語がある。 |
| 特に、「奏す」と「啓す」は相手が決まった用い方をし、絶対敬語と呼ばれる。 | |
| 奏す(サ変)=天皇(上皇・法皇)ニ申シアゲル | |
| 啓す(サ変)=中宮(皇后・皇太后・皇太子)ニ申シアゲル | |
| 「よきに奏し給へ、啓し給へ」 | |
| 「よいように帝に申し上げてください、中宮様にも申し上げてください」 | |